なおっちのお一人様フェスティバル

これからはお一人様の時代だ。映画、お酒、サッカー、旅、本が好きななおっちが、お一人様に嬉しい情報を発信していくよ

青春小説⑧

 冬休みに入った。世の中はクリスマスとか、年末やお正月の準備で騒がしい時だった。僕は家で映画を観ていた。今日観たのはラブストーリーだった。まぁまぁの面白さだった。

 そんな自分の時間を楽しんでいる時に、電話が掛かって来た。無視すれば良かったのだが、何回もかかって来るので、仕方なしに出た。学校からだった。聞いたことのない声で「部活に来い」と言われた。。やれやれ、何でそんな無意味な場所に僕を引きずり出そうとするのか。せっかく、中村という少し心を許せる人間が出来て、僕の生活は少し良くなると思っていたのに。僕に退屈な現実が降りかかろうとしていた。

 翌日、僕は仕方なしに学校へ行った。雪が積もっている道を、自転車で学校に向かった。学校に着くと、体育館ではみんな怠そうにピンポイン球をラケットで打っていた。ヘラヘラ笑いながら、意味不明の必殺技で相手の顔面に球をぶつける者、隅っこでただ見ているだけの者、一組だけ本気でラリーを続けている者もいたが、あまり強そうな部活じゃない事は、誰が見ても明らかだろう。そんな粗末な部活の様子を見ていると、顧問が僕の方へ来た。

「活動に参加しなさい」と彼は言った。僕はラケットを握り、卓球台の前に立った。相手はそれなりの経験者らしい人だったから、僕は相手にならなかった。嫌味なほど本気のスマッシュが僕に飛んできて、僕は反応すら出来なかった。やる気のない部員の元へ球が飛んでいった。彼らは僕の事をあざ笑ったが、僕は無視した。

ところで、彼らは参加しなくても許されるのだろうか?彼らは部活もしなければ、勉強もろくにしていないような連中という事は察しがついたが、それにしても僕だけ参加させられるのは、不公平だろうと思った。

 僕の番が終わり、一旦休憩した。先ほどのやる気のない一味のうちの一人が、僕に話しかけて来た。その男のニヤニヤした表情が、妙に僕を苛立たせた。

「よ、卓球部に入ったの?」と僕に尋ねて来た男は、同じクラスの人間だった。緩い雰囲気が全体から漂って来るこの男は、弱い卓球部の中でも雑魚キャラというところだろう。いつもテキトーに生きて来たオーラを放っていた。

「まぁ、そうだけど。君は活動しないのかい?」

「そうだね。俺は何もしなくても怒られないよ。こんな部活やっても、何も意味が無いよ」彼はまたもニヤリと笑った。僕も彼のように、部活から忘れられたいと思った。それでも、この男と同じ道を行く気にはならなかった。彼は、クラスで話したことは無いが、この男はとても奇妙な雰囲気の男である、という事は何となく分かった。

 その日は、それで僕の番は終わった。卓球は、ラリーを続ける分には良いが、経験者が本気で打って来るのでは、面白くなかった。関わったことのない人間ばかりなので、僕に絡んでくる人もいなかった。僕は良い意味で放って置かれたので、それが非常に有り難くて心地良かった。終わったら、誰とも話さずすぐに帰れば良かったのだ。

 帰り道、僕は例の彼と一緒になってしまった。出来ればあんまり関わりたくないタイプであったが、仕方が無く隣で歩いた。途中、同じ学年と思われる女子の集団に遭遇し、こっちを見られたが、特にそれだけだった。

「何でこんなさぼり部に入ったんだよ?」と尋ねて来た。男の名前は平井だった。若干ぽっちゃりしていて、何もやる気の無さそうな態度が、何回見ても伝わってくる。そして、彼は菅野と共に、クラスの中でも勉強が出来ない代表的な人間だった。

「いや、何でって、どこかに入らなきゃいけないからだよ。特に入りたかったわけじゃないし」

「何で前の部辞めたんだよ?」

「まぁ、色々揉めたんだよ」あまり関わりたくない男だが、ずけずけと質問してくる男だった。このような人間といると、また下劣な人間を呼び込むことがある。特にこの男の場合は、ゆるっとした見た目のせいか、誰でも呼び込んでしまう。彼はいつも、意味不明な者たちと、意味不明な行いをしている。彼らがしている、お互いの方を叩き合って最初に「痛い」と言った方が負けというゲームも、イマイチ面白さが分からなかった。いずれ、彼らのような集団と関わる事は無いだろう。

 そのうち、彼の家は方向が別なので別れた。ゆるっとして、ぽっちゃりして、何もやる気の無さそうな、奇妙な男だった。

 いずれ、もう二度と卓球部の活動には参加したくない。一人で家で過ごして、自分だけの時間を過ごすのだ。僕の世界に入れても良い人間は、中村と高橋だけだった。

 

 この年の冬は酷く寒かった。あまり外に出る気もせず、ひたすら内に籠っていたい。自分の中で、何かを構築したのだ。他人には分からない、自分だけの世界を作るのに、他人の介在を許したくないのだ。

 そう思いながら、奇妙な男と別れた後の帰り道を自転車を走らせながら考える。中村に会いたい、もっと言えば、中村と高橋さんに会いたい。彼らの関係に、僕が介入していいのか、それは分からない。

 中村は、僕の数少ない友達(と呼んでいいの分からない)で、高橋さんはその彼女だ。その女の人に、全く興味が無いとは言い切れないのだ。しかし、中村と彼女の関係は、これからも続いて欲しい。けど、この高橋さんへの感情は何なのだろうか?中村と彼女が上手くやっているのがすきなのか、それとも、僕が好きなのは本当は高橋さんで、その女と付き合っている品の良い男も、嫌いではない、という事なのだろうか?

 考えていたら、いつの間にか道路に飛び出していた。緑のカローラに轢かれかけて、ハッとした。運転手に怒鳴り散らされたが、何と言っているのかは分からなかった。そのカローラはすぐに走り去ってしまった。僕はすぐに走り出し、家に着くころには外はかなり暗くなっていた。家に着くと、僕は高橋さんを思い出して、またも自慰に走り、終わった後の空虚な気持ちに襲われた。目を閉じて、ぼおっとしていると眠りに落ちた。