なおっちの独り言

映画、本、サッカー、ギター、食べる事が好きな筆者が、ゆるーい内容でお伝えするよ。

青春小説③

 僕は毎日、色んな映画を観た。ほとんどがアメリカの映画だった。ラブストーリーや戦争映画、アクション、ミステリーなど、見たことのないワクワクがいっぱいあて、それを見ている間は日々にのつまらない思いを忘れさせてくれた。

 アメリカの戦争映画では日本が悪者として描かれるが、それはどうでもい良かった。アメリカにも犠牲になった人がいたのも事実だ。戦闘シーンと死んでいく兵士たちに、何故か涙してしまう事もあった。車のゲームも好きだった。現実ではまだ運転が出来ない。ゲームはそんな僕に、ドライブの場を与えてくれた。

 

 一方、学校の退屈な教師や勉強には、ほとんど興味が無かった。しかし、僕の成績は学内でも上位の方だった。全く。不思議なものだ。そして、ノートを綺麗に取って授業も真面目に聞いているのに、凄く勉強が出来ない人もいる。大体、それは女子だ。彼女たちはいったい何をしているのか、僕には不思議でしょうがない。

 

 夏休み明け、僕は学校を何日か休んだ。しかし、親に行けと言われたので、仕方が無く、始業から四日経った日に、初めて登校した。全く見慣れた、醜い人の顔が並んでいる。

「何で休んでたの?」と誰かに話しかけられた。斜め後ろの女子だった。よく見ると、結構可愛いと思った。少し考えると、体育祭の時に話しかけて来たあの人だった。あまり女子で話しかけて来る人はいない。ずいぶん珍しい人だ。

「いや、来たくなかっただけだよ」

「来たくないから来ないの?」

「うん、そうだよ。特にやりたいことも無いし」

それで、この会話は終わった。何で話しかけて来たのか、僕の答えを聞いてどう思ったのか、それは分からない。彼女にとって、人に話しかけるのはそう言う事らしい。僕みたいに、よほどの事が無いと話しかけない人ばかりではないのか。普段は、人に話しかけられても答えたくもないのだが、この時だけは普通に答えてしまった。この女、何考えているんだ?

 

 そんな会話で僕の中二の二学期が始まった。しかし、ちょっとかわいい子に話しかけられたからと言って、僕の毎日が変わるわけでは無かった。特に嫌だったのは、僕への風当たりがさらに強くなったことだ。僕の悪い噂は女子にまで広まっているらしい。僕は階段を上ると、降りてくるクラスの女が、僕の名前を出して悪口を言っていた。詳しい内容は分かりかねるが、良い話ではない事は会話のトーンで容易に想像できた。彼女たちと目が合う。気まづい空気が一瞬、僕らの間を駆け抜けた。早く家に帰りたい。帰って好きな物に囲まれたい。そう思って過ごす時間は物凄く長い。

 その日の午後、理科の先生と生徒の間でもめ事が起きた。何故かというと、クラスの例の馬鹿たち騒いで全く授業にならず、先生が理科の授業を延ばすと言ってきたからである。それで、生徒たちは次の授業は体育だったので、それが嫌だったという訳だ。僕からしたら、周りの人達と関わらなくて良い理科の方が楽なので、伸びても別に構わなかった。

 しかし、ベルが鳴ると彼らはすぐに出て行った。僕は体育が好きではなかったので、始業のぎりぎりにグランドに出た。みんな、気合が入っていて気持ち悪い。僕を含め、クラスの中に入れない人達は隅っこでその様子を眺めていた。気合が入っているといっても、体育大会では弱小だった奴らである。こいつらの運動レベルなど、たかが知れていた。

 クラスの中心的な菅野がその一人だ。人一倍気合は入っているが、それに運動能力が付いてきていない。何をやっても声だけ。僕は、凄く嫌いだ。

 僕の打球が偶然遠くに飛んで行った。僕はそれを見てゆっくり走る。

「田中、もっと速く走れないのか?」と怒鳴り声が聞こえて来た。菅野だ。口だけの奴。

 菅野の打席。太陽が菅野の頭を照らす。彼の頭皮が透けていた。髪が細くて、若干頭皮が見えるくらいなら良くあるが、これはそのレベルでは無い。結局、彼は空振り三振。ベンチに帰って来た彼の頭を見てみた。彼の頭にはアトピーが出来ていて、それが髪の育成を妨げているのだ。

 

 体育が終わると、僕は菅野の悪口を思い出して、少し笑った。彼が少しでも大人しくなってくれると良い。むしろ、学校に来なくていい。

 

 そう思っていると、彼の髪の毛事情に気づく者が表れ始める。この秋、彼は髪の毛で苦労することになる。彼についたあだ名は「スポット禿げ」だった。この前の音楽の先生と言い、今回の菅野と言い、みんな、禿げには厳しい。そう言う彼らの父親だって禿げはいるだろうし、この中から禿げる人もきっといるはずだ。彼らはそれを分かっているのだろうか?

 

 退屈な部活に時間。僕はさぼり癖が付いていたので、もはや練習についていけなかった。みんな、それを分かっているようだ。走れない。もう、こんなところに居る意味は無くなった。僕は九月の末に、その部を退部した。