なおっちのお一人様フェスティバル

これからはお一人様の時代だ。数々の経験から「一人が一番」という結論に至る。映画、お酒、一人旅、本など、お一人様に嬉しい情報を発信していくよ。

青春小説④

 部活を辞めた事を後悔してはいなかった。九月の新人戦で優勝できず、以前より彼らとの関係も悪くなったからだ。そこに居続ける理由も無いのだ。

 僕の入っている部活はここ何年か、地区の大会で負けたことが無かった。しかし、僕らは決勝戦で延長戦の末に敗れ、久々に地区大会で姿を消すことになった。

「お前ら、恥ずかしくないのか?」試合の後、顧問の教師が円になった部員を前に怒鳴り散らした。そんなの知ったことじゃない。この顧問の指導法にはみんなうんざりしていたのだ。

 チームスポーツの場合、負けると雰囲気が凄く悪くなる。誰のせいだ、と犯人探しが始まる。僕も何回か戦犯扱いされたことがある。僕らが、仮に強いチームで、学校でもそれでかっこが付くならまだ所属する意味はある。しかし、今回のような敗戦で学校でも肩身が狭いし、部活に来ても全く面白くない。これでいる意味なんて無いだろう。

 辞める時、僕は色々文句を言われた。普段は僕の事なんて気にもしないのに、こういう時は引き留めるのだ。引き留められても嬉しくない。とにかく、もう部員の顔すら見たくも無かった。僕は顧問に退部届を提出し、足早に学校を去っていった。二度と彼らと愚かな時間を過ごさなくて良いと考えると、物凄くスッキリした気分と、今まで彼らと過ごした愚かな時間を後悔する気持ちが、両方襲ってきた。なぜ、僕は早く辞めなかったのだろうか。

 

 辞めてからの放課後は、凄く楽しみな時間になった。帰れば楽しい時間が僕を待っている。うんざりする部員たちの顔を見る事も無い。そうすると、退屈な学校生活も何とか耐えられた。

 

 九月の終わり。日が暮れるのが早くなり、風が涼しくなった。

 

 僕が辞めた後は、それはかなり気まずかった。廊下ですれ違う部員の奴らからは何か言われるし、クラスにもその話は広まっていた。

「あいつ、部活辞めたんだろ」そんな話が聞こえる度にうんざりした。彼らは僕の事が好きではなかったはず。僕が辞めて嬉しくないのか?それなのに、何で僕が辞めた後に騒ぐのだろうか?全く、意味が分からない。

 

 本格的に秋になると、僕の学校での憂鬱な気分はますます増していった。日が短くなり、寒くなると、僕は毎年嫌な気分になる。大体、もめ事が起こる時期はこの辺だ。みんな、この時期は不安になるのだ。学校が終わるのが待ち遠しい。

 十月になると文化祭の準備が始まる。集会では意味の分からないスローガンが発表されたり、「文化祭の意義」が教師から唱えられたりと、これまた僕にとっては不快極まりない時間となった。クラスでは歌の練習が始まり、謎の「団結力」の下、金賞を目指すという事になった。団結力なんてこのクラスのどこにあるのだろうか?

僕にとって文化祭はつまらない。何で毎年こんなことをするのか?みんな、やりたくないはず。毎年のようにもめ事が起こるのは、このような意味不明な行事のせいだとも思っている。やりたくも無いのに無理やりやらせて、何か素晴らしいものが創造できるのだろうか。誰か教えてほしい。

 ある日、僕は先生に呼び出されることになった。理由は、「合唱の練習をちゃんとやらななかった」という理由らしい。

 「俺は、合唱大好き人間だ」という訳の分からない説教から始まった。そうだったら僕のほかに怒るべき人間がいるだろ。僕はかなりまともな人間だ。人のものを壊して面白がっている者、授業の邪魔をする者、先生を侮辱して休職に追い込む者、こいつ等と比べて、僕のどこが悪いというのか。こんな奴が出る文化祭に、価値なんてあるのか。文化祭何てやらなくて良い。中止にしてしまえ。

 歌の練習では女の子が泣き出したり、男子の一部が途中で抜けたりと、団結力の欠片も見えなかった。女子の連中はみんながしっかりと歌っているみたいになっているが、僕が見たところ、全くそうではなかった。歌う事に抵抗のある人だっているのだ。それで「私たちはちゃんとやっている」と言い張るのもおかしな話だ。

 他のクラスでも問題は起きていた。あるクラスでは先生が泣き出していた。やはり、この行事に何の価値も無い。何から何までめちゃくちゃで、それでもこの過程を「素晴らしいもの作るため」と謳っているのが、恥ずかしくてしょうがない。僕はこの行事のあらゆるところから離れたかった。

 指揮者の人間が急に怒鳴り散らした。僕を含め、男子の連中が何もしないからだと言って、担任の教師を呼び出した。高田は凄い勢いで怒鳴り込んできた。その後、学年でも腕っぷしの強さで有名だった奴(僕はあまり好きではない)が、高田に食ってかかった。彼らは互角の戦いを見せた。この時だけは武闘派を応援した。

 机やクラスの備品が散乱し、もはや歌どころでは無かった。これは起こるべくして起こったのだ、と自分に言い聞かせながら、僕はその後の静寂の中に佇んだ。

 結局、教師たちは「男子」が全員悪いという結論を出した。女子だって歌っていない奴はいる、という僕たちの反論は、聞き入れられることは無かった。教師全員が僕たちのクラスにやってきて、それぞれ説教した。それは夜の七時まで続いた。教師が怒鳴り散らして無理やり歌わせて、それが「素晴らしい何か」になるのだろうか。

 文化祭当日。僕は当日の歌の練習を休んだ。休んでも誰も何も言わなかった。その時間はトイレでWalkmanで音楽を聴いていた。

そして本番、クラスの人達が一生懸命歌っているのか、僕は少しも口を開かず、終えた。本当に、どうでも良い瞬間だった。歌い終わった後、泣き出す女が何人かいたが、何で泣いているのか、さっぱり分からなかった。

 合唱の結果発表。僕らのクラスは金賞どころか表彰すらされず、心の中で僕は喜んだ。全く、僕が怒られたって、誰かが泣いたって、結果には結びつかなかった。

 終わった後、何かをみんなで話していた。「みんなありがとう」という言葉が聞こえて来た。合唱で指揮者をやった人が泣きながら言っていた。人を理不尽な説教に追い込んでおいて、何が「みんなありがとう」なのか。まぁ、彼女の能力が無いから、このクラスは賞を取れなかった、と思えば何となく彼女を憐れに思えたので、怒りも収まった。

 

 続く。