なおっちのお一人様フェスティバル

これからはお一人様の時代だ。映画、お酒、サッカー、旅、本が好きななおっちが、お一人様に嬉しい情報を発信していくよ

青春小説⑤

 文化祭が終わって大きな(僕にとっては凄く些細な)事件があった。クラスのリーダー的存在だった女の子が、突然学校から姿を消した。今まで仲良くしていたはずの人達が、彼女の悪口で盛り上がっていた。

 僕は、消えたその女の子が嫌いだった。俗に言うチャラい人達とつるみ、自分の事を可愛いと連呼してみたり、ある時はすれ違った僕に「キモイ」と言ってきた事もあった。そんなこともあり、僕は彼女が学校に来なくなったことに対して、何も思わなかった。むしろ、来ない方が有り難いとさえ思っていた。

 しかし、今までグループでつるんでいた女子たちのあの態度が、恐ろしく酷いものだった。今までは仲の良さそうなふりをしていて、彼女が来なくなったら悪口を言い合っていた。それで急に切り捨てるなんて、やはり友達なんてそんなものなんだ。僕は今更失望するまでも無かった。文化祭の後、泣きながら感謝していた生徒も、その女の子の事を貶していた。「みんな、ありがとう」の言葉の価値何て、それくらい安っぽいものだったのだ。彼女の言葉に、耳を貸さなくて良かったと思った。

 しかし、元から人間、特にこの学校の連中にはうんざりしていた。僕の考えが、正しかったという再確認された、と言うだけの事だった。

 その不登校の女の噂は学年の人達に広まっていた。トイレに行く途中の廊下で女子たちが話しているのが聞こえた。

「あいつ、不登校になったの?」

「え、マジで。良かった」

「だよね。何で学校来てるのって感じだったじゃん」

「自分可愛いと思ってたのかな?凄くウザかったし、良かった」

「と言うより、嫌われてる事に気づかないの凄いよね」

少なくてもそのグループに、彼女が消えたことを悲しむ人はいないようだ。彼女と仲良くしていた人でさえ、誰も気にするどころか喜んでいるのだから、仕方がない。僕だって、彼女の事は嫌いだ。誰も心配すらしないのは、少し悲しい気もした。僕はこの学校で、人に心を許すことはせず、出て行きたいと思った。

 

 そうこうしているうちに、冬がやって来た。冬は寒くて暗い。何も無くても憂鬱になる。朝起きる時、学校に行くとき、学校に居る時に、突き刺すような寒さが襲ってくる。学校で何をする時も、僕は正体の分からない不安に襲われた。

 特に酷いのは体育の時だ。柔道着に着替える時の寒さは異常だ。何で冬に柔道などやるのか。高田の悪意を感じる。ちょうどいい時期にやるという発想は無かったのか?絶対に、この男は「辛い思い」で人を成長させようと考えている。典型的な根性論支持者である。そういう人は新興宗教でも立ち上げてさっさと独立してしまえばいいのだ。今時、宗教は金になるものだ。そのような考えを教育に持ち込まないで欲しい。

その柔道の時間、例の素行の悪い生徒たちは柔道の授業には参加しない。それを怒る事をしない高田。どちらも酷い。

 菅野は運動能力はさておき、体を動かすことだけは好きらしかった。体育の時間は張り切っていた。サルみたいなやつだ。

菅野の体はとても強いとは言えない。体も小さければ、彼は部活にすら参加した事が無いらしかった。自分より体の少し大きい人には、まるで勝てなかった。しかし、考えても見れば、普段から鍛えている人に彼のような人間が勝てないのは、当然だった。

 僕は決して強いとは言えないが、自分と同じくらいの体の人達には勝つことが出来た。誰とも言葉を交わすことも無く、ただ相手とぶつかる。楽しいとは言えない時間だった。授業が終わっても、ささっと柔道着を片づけて、教室に引き上げた。教室に帰ると、また興味のない授業に参加した。退屈な日常に更に寒さが味方して、僕の頭は壊れそうになっていた。

 

続く