ニートの平日

地方国立大卒ニートの生活記録。「え、ニートに平日も休日もないだろ....」という下らない日記です。

映画「悪人」誰が(刑法的な意味ではない)悪人なのか?

こんにちわ、なおっちです。

映画の感想を書くのを再開したんですが、映画というのはよく観てみるとメッセージ性に富んでいたりします。エンターテイメントとして観ると微妙に思える作品でも、そこに注目すると良い映画だったりします。

んで、人の闇が見える映画は作るのが難しい分、上手く出来ていると面白いのです。「人間て素晴らしい」というストーリーの方が人は面白く感じるし、実際ハッピーエンドの映画は興業収入も良いらしいです。

そんで先日、一時期話題になっていた「悪人」を見ました。確か、カンヌか何かで賞を取ったとか。

悪人

悪人

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

観てみると、やれやれというか。何処かに絶対悪を見つけて、それを叩いてスッキリしたい、と思いますが、なかなか逃げ場がないんですね。誰が一番悪いのか、そこを考えさせるのが、本作の目的でしょう。少なくとも僕にはそのように映りました。

会社員の若い女の佳乃は、増尾という若い金持ちの男に出会います。彼女が彼のクルマに乗る所から話は動きます。
男は佳乃をウザがっているのですが、佳乃の方はなかなか気づきません。それどころか、つまらない話を続けてしまい、金持ち男を怒らせてしまいます。佳乃は車から降ろされてしまいます。

同じように佳乃に出会い系で出会った祐一(妻夫木)は、その現場を目撃します。んで、彼女の乗るその車に付いて行きます。
しかし、山中で佳乃は降ろされます。祐一は彼女を助けようとしますが、何と佳乃は思いがけない反応を見せます。それで、祐一は驚きと危機感から、佳乃を殺してしまいます...。

そんで、事態は当然、周りの人間にも波及します。佳乃の家族、祐一の家族など。
祐一は、事件の後に出会った、紳士服店に勤務する光代と、逃避行を開始します。そこから、祐一と光代は愛に目覚める訳ですが、現実を思い返すと、祐一には事件が、光代には退屈な日常が待っている訳ですね...。

この登場人物(祐一や佳乃、金持ち男、光代、彼らの家族)は、いずれ、日常に退屈している、という点で共通しています。退屈な日常に苛立ちを覚え、それを凌ぐために、インターネットで出会いを求め、それも上手く行かず、さらに不満が噴出し、それが思わぬ事件を招いた、と。

退屈を感じた人間というのは、その日常を変えるために、様々な手を講じます。退屈さから来る怒りの矛先は、時に他人に向かいます。偶然が偶然を呼び、祐一は思わず手を下してしまうのですが、果たして悪いのは誰なんですかね?という問題が出てきますね。

もちろん、殺した祐一は法律的に罰を受ける対象になります。しかし、彼は山で車から降ろされた佳乃を救うために手を差し伸べた訳ですよ。しかし、佳乃は金も無く何処かいけ好かない彼を避け、逆に自分の惨めさの責任を彼に押し付けようとします。

その佳乃が何故不満かと言うと、金持ちの増尾にクルマから降ろされたからです。
その増尾は、最初から佳乃の事が好きでは無く、その時は仕方が無く付き合ったが、佳乃と性格が合わなくて、彼女を捨てた、と。彼も悪いですよね。どこに絶対の悪があるのか、よく分からなくなる訳です。
確かに、人を殺すのは刑法で罰せられます。しかし、見ていると、むしろ人間的に最も善良なのは祐一に見えてくるのですよ。むしろ、金持ちに振られて怒りの矛先を間違えて、救いを差し伸べた人間を陥れようとした佳乃が、最も劣悪に見えてくる訳ですね...。

さらに酷いのは、この殺害された佳乃の父親が、「自分の娘には罪が無い」と思っている所です。明らかに自分の娘にも落ち度があるのに、そのように考えるのは、親だから、あるいは被害者だからでしょうか。
まぁ、何も知らなければ、普通はそのように思うのは当然ですが、佳乃の祐一を陥れる言動が無ければ、彼女は殺されなかった訳ですよね。この辺が人間社会の怖い所ですね。事件の当事者ではない人間には、それがわからないと。

さらに、それは祐一の家族にも影響します。マスコミが彼の家に押しかけてくるんですね。ここでも退屈というのがカギになります。日常に退屈している人間は、イベント、言い方を変えると他人の不幸を求めています。だから、マスコミはそんな人たちが食いつく事件を伝えることで、アクセスを稼いで、自分たちの飯にする訳です。

殺人事件というのは、「殺した人間が絶対に悪い」という風に思いがちですが、世の中では、中にはそうでもない事件もあるのでしょうね。
いや、もちろん見ず知らずの人間を殺すのは死刑で良いと思いますが、人間関係のもつれや金銭関係から来る殺人事件というのは、その中でどのようなやり取りがあったのか、当人たち以外には完全に知ることは出来ません。劇中でもそれが表現されています。

さて、悪いのは誰でしょうか。祐一の身になると、女にこのような言い掛かりを付けられたら、男は当然に動揺しますよね。これはヤバいと殺してしまうのも、分からなくはないです。

余談。気になったのが、主人公の祐一がスカイラインGT-R(R33)に乗っている事です。解体屋勤務の、あまり年収の高く無さそうな祐一なんですが、どうやってこの車を維持しているんだろ...。
金も無くて人生に退屈している荒んだ若者を表現したいなら、もっと良いクルマがあるのに(ホンダのインテグラとか日産のシルビアとか)。
決してインテグラやシルビアを悪く言う訳では無く、安くてそれなりに若い男が乗り回しそうなクルマはあるよ、と言いたいだけです。流石にGT-Rは金持ってないと買うのは難しいですよ。祐一お前金持ってるな~というのが、最後まで引っ掛かりました。

悪人

悪人

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

naocchi3.hatenablog.com
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