ニートの平日

地方国立大卒ニートの生活記録。「え、ニートに平日も休日もないだろ....」という下らない日記です。

映画感想:『64-ロクヨン-』 被害者の執念と刑事の魂を見よ。

邦画の当たり年だった去年(もう少しでおととしになってしまう)。思い出すと、確かに良い日本映画がいっぱいだった。全国公開の作品から、あまり宣伝をしない映画まで、色々発見があって楽しかったのも、懐かしいねぇ。

 

そして、今回取り扱う『64』。有名俳優をふんだんに起用し、「傑作の誕生」とまで宣伝したわりには、あまり話題になる事は無かった。

 

しかし、それは後に公開された作品たちがあまりに優秀過ぎたからだろう。この映画だって、間違いなく優秀だったはず。他のブログではあまり取り上げられていないので、皆と逆を行くこの僕が、あえて紹介する。

 

監督:瀬々敬久

キャスト:佐藤浩市綾野剛榮倉奈々永瀬正敏三浦友和仲村トオル、奥田英二、瑛太、緒方直人、金井勇太夏川結衣滝藤賢一、他

 

<テキトーにあらすじ>

わずか7日で幕を閉じた、昭和64年。世間が天皇崩御で騒ぐ中、一人の子供が誘拐され身代金を要求される事件が発生した。

群馬県警の三上らは捜査に奔走するも、なかなか手がかりを掴めず、未解決のまま14年の月日が流れ、時効間近となっていた。

その後、刑事部を追われ刑務部の広報官に就任した三上。記者クラブの人間たちに、時に理不尽な批判を受けていた。

そんな時に、警察庁長官の視察があると上から言われる。長官は昭和64年の誘拐事件の遺族を訪問するため、三上は遺族に久々に再会。その後、彼は一人、昭和64年にさかのぼり、誘拐事件の真相を突き止める、、、。

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<感想>

主人公の県警広報官三上が、マスコミや上層部に板挟みに苦しみながら、7日で終わった昭和の事件に挑む、重厚なサスペンス映画。

実力派を多く起用しているのが良いねぇ。役者の一人一人が凄く良い役を演じているから、緊迫感のあるストーリーが上手く回っていた。中でも、主役の佐藤浩市と記者役の瑛太、警察上層部の人達が渋すぎる。

 

有名役者を多く起用した映画は好きでは無い方も多いようだが、ジャニーズとアイドル推しのペラペラな映画より、全然良くないか?むしろ、こちらは全員が本業の役者ですから。大根演技に「アレ」と邪魔されず、安心して最後まで楽しめるぞ。

 

そして、何よりオチがとても素晴らしい。数々の伏線がそこで一気に回収されていて、凄いやられた感。被害者の執念が、犯人逮捕につながって感動しましたよ。81点。

 

 

この映画は前編と後編に分かれている。ちょっと長いんだよね。前半の内容を60分に詰めて、3時間の映画にすれば良かったのでは?と思う。前編から順に、あらすじを追って説明していくぞ。

 

時は昭和64年。身代金を要求した誘拐事件が発生。群馬県警の三上らは刑事として捜査する。しかし、犯人は捜査の一歩先を行き、特定には至らないかった。そして、誘拐された女児は車のトランクで死亡していた。

同じ頃、昭和天皇崩御し、世間は新しい平成の幕開けに騒いでいた時だった。その事件は、その喧騒にかき消されてしまった。

14年の時を経て、刑務部の広報官に就任した三上。三人の部下を持ち、記者クラブと報道のやり方を巡って日々争っていた。

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ただの誘拐事件を解決するサスペンスという要素だけでなく、昭和の終わりや記者クラブとの闘争をサブテーマとして扱っているのが良い。おかげで、刑事から広報に飛ばされた三上の苦労と、警察と言う組織の暗さをさりげなく、しっかりと強調出来ていた。

 

東京から警察庁長官が来訪し、そこで64事件の遺族に挨拶に伺う事になる。三上は被害者の父・雨宮芳男に話を通しておくように、上から命令される。しかし雨宮は変わり果てた姿だった。家には妻と娘の遺影とボロボロの電話帳が置いてあった。

そして、三上は再び、たった7日で幕を閉じた昭和64年に一人帰り、あの時何があったのか、調べることになる。当時の捜査関係者の幸田一樹などに接触し、警察のミスで犯人の声を録音できず、それを上が隠蔽していたと判明。犯人の声は電話に出た雨宮しか知らなかったのだ。

また。この頃から三上の家や警察関係者の家などに無言電話が鳴るようになる。

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その頃、老人が女性の車に轢かれて死亡するという事件が発生。「犯人を実名で報道しろ」と主張する記者クラブの面々と、名前は明かせないという警察上層部の間で、広報のメンバーは板挟みになるのだ。

三上を中心とする広報の連中が、ただ上の言う事を聞くことしかできず、記者に詰められるシーンが何度も。このやり取りも凄く見ごたえあり。

 

三上は、何とか記者を落ち着かせようと報道協定を結び、実名で被害者と加害者の名前を公表。この時の三上が渋すぎて渋すぎて、、、。堪らないぜ。そして、記者たちは三上らを信頼したのか、一瞬だけ穏便な関係が出来上がる。

瑛太君演じる記者の秋川が、かなりの存在感を見せて来る。いつもクールに構えている瑛太君がギャンギャン警察を煽るのも似合ってる。山田、小栗、綾野に負けず劣らず、素晴らしい。

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記者たちを何とか沈めることに成功した三上ら。しかし、ここである事が起こる。

スポーツ用品店を営む目崎正人という男の元に、丸越百貨店の一番大きいスーツケースに現金2000万円を持って来るようにと、電話が入った。偶然にも、昭和64年の事件と同じだったのだ。 

 

後編は、前編の振り返りを2~3分流した後、三上が捜査情報を上層部に要求するところから始まる。

報道協定を結び、マスコミにしっかり情報を提供すると約束した三上は、何としても捜査情報を得なければならない。

しかし、捜査本部はそれを拒否。再び、記者クラブと広報の溝が生まれる。ここの三上が必死に上に噛みつくシーンに、自分の部下と記者たちを想う気持ちが感じられる。自分の事よりも、関係する人々の為に動く三上広報官、素晴らしくカッコいい。

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東京からも取材に記者が押し寄せ、会見場は大騒ぎ。情報を何とか引き出すそうとする記者に対し、必死に対応する広報の面々。三雲や諏訪は対応に追われる中、情報を何も知らない捜査二課の刑事が会見に来て、更に状況は悪化する。

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ここでの記者の連中がとにかくウザい。特に東京の記者たちが県警や支部の記者を馬鹿にするのはムカつく。地方の記者だって、県警だって一生懸命やってんだよ!と少し警察よりの見方をしてしまうでしょう。

 

とここからネタバレを含むので未見の方はここまで。プライムビデオでも観れるのでぜひ。

 

64-ロクヨン-前編
 
64-ロクヨン-後編
 

 

 

三上は捜査本部の人間と共に指揮車に乗り、得た情報を会見場の部下に流す。犯人は目崎正人に、現金をとある喫茶店に持って来るように要求。その喫茶店にも、三上は覚えがあった。

犯人はヘリウムガスを使って声を隠していた。だが一瞬、ガスの効果が切れ、犯人の声が漏れてしまう。

 

幸田!幸田だ!これはミスを握りつぶされた幸田の復讐だ!と三上はここで気付くのだ。

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そして、目時の娘は無事に保護。誘拐されたのではなく、一時的に家を出ていた事を利用した狂言誘拐だった。幸田は、そこまでして、あの事件の責任を果たそうとしたのだ。

しかし、なぜ目崎は狙われたのか?偶然にも、犯人の指示は64事件に酷似する点が多すぎる、、、。

ここで三上は警察庁長官訪問の挨拶に行った時の電話帳の事を思い出す。そして、自分の家や他の警察官の家に掛かってきた無言電話。犯人の声は、雨宮しか知らない。

雨宮は、電話帳の電話番号を一つ一つ調べ、自分の聞いた犯人の声と一致する人物を探し当てたのだ。

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恐ろしいほどの執念。まさかそういう事だったのかぁ~、と思わず声を上げたくなる。これで無言電話も捜査ミスの件も上手く説明がつくのだ。

そして、目崎には暴力団に騙されて作った借金があった。返済は64事件の後。ここで、三上はこの事件を雨宮と幸田の共犯、そして64事件の犯人を目崎だと確信する。

 

しかし、刑事部長は反対。幸田らの録音ミスは歴代刑事部長の申し送りになっていたのだ、、、。

 

ここからの三上は刑事の貫禄そのもの。単独で目崎を追い詰める。

「お前にも同じくらいの娘が居たはずだ。それなのに、何故小さい女の子を殺せる?」

「俺や雨宮は一日も、64の事を忘れていない。」

と、一人で目崎に詰め寄るシーンはマジで激熱。これぞ刑事ドラマだろ、と言わざるを得ない。警察官として一つの事件の解決に挑み、犯人に最後の勝負を挑むのだ、、、。

 

刑事の捜査ミス、上層部の隠蔽、マスコミや同僚との確執等々、、、。一見普通の刑事ドラマだけど、しっかりオチと主役のキャラクターで面白さを出せていたのが良かった。この先、このような作品はあまり現れないでしょうね。

 

余談だが、この年は綾野剛が出まくっていた年でもあった(本作、日本で一番悪い奴ら、怒り、リップヴァンウィンクルの花嫁、闇金ウシジマくん等)。

本作では真面目な警官役なのに、「日本で一番」では悪役。同じ時期に色んな役をやると、混ざるんだよね。かっこ良くて良い役者なんだけど、他には居ないのか?と言いたくもなるんだよね~。

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