ニートの平日

地方国立大卒ニートの生活記録。「え、ニートに平日も休日もないだろ....」という下らない日記です。

映画『ジョーカー』感想 透明にされた人間のリアルな悪意。

さて、去年話題になった『ジョーカー』を見ました。

ダークナイトの悪役ジョーカーを主人公に据えたサスペンス映画です。

ジョーカー(字幕版)

ジョーカー(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: Prime Video
 

 


映画『ジョーカー』特報

 

ジョーカーと言えば、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』に出て来るジョーカーを思い浮かべる人も多いですね。演じたヒースレジャーはアレが遺作になった事で、さらに人気になりましたね....。

ダークナイト (字幕版)

ダークナイト (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

期待たっぷりで見た本作の印象は「ちょっとイメージと違う....」。なぜかと言うと、本作は演出抑えめ、しかも派手なアクションシーンはほとんど無し。もう少し派手にエンタメ調でやって来るのかなと思っていたら、思いの他という感じです。

エンタメに振ると、確かにお客さんは来ますよね。でも、それだと何か都合が悪い、という事かな、と思いましたよ。

 

なぜ都合が悪いかと言うと、本作の真意はエンタメではないからです。本作の真意は「社会の分断」です。ジョーカーと物語の舞台ゴッサムシティというのは、それを伝えるための、あくまで分かりやすい「アイコン」としての役割にとどまっています。

治安の悪いゴッサムシティと、そこに誕生したダークヒーローのジョーカーという設定は、「バッドマン」(ダークナイト)を少し借用する事で、僕たちのような一般の人にも分かりやすく受け入れさせる、という役割を担っています。

でも、中身はただのヒーロー漫画にとどまらず、現実社会をしっかりと反映させ、確実に我々に訴えかけて来ます。ジョーカーは、その為の入り口の役割をしているのです。

 

というのは圧倒的な個人の感想ですが...。そのために、派手なアクションや演出を抑えて、あくまでリアリティに徹している、と。それで何が表現したかったかと言えば、それはアメリカで進む分断ですね。大統領選でも、明らかになりましたね。

 

分断を放って置くと、確実にその仕返しは、社会の各所に及びます。分断というのは所得や人種、学歴などで生じる国民の間の格差の事ですが、どうやら先進国では、この流れは進むようですね。それはグローバル化とかの影響ですが、今後もAIの進化で、この流れが加速するという見方が強いです。

 

少しストーリーに触れます。

主人公のアーサーは、お笑い芸人を目指す青年です。しかし、脳に障害があり、突然笑い始めるという病を持っています。母は病弱で、そんな母と貧乏な暮らしをしています。

お笑い芸人を目指す彼でしたが、なかなか芽が出ません。それどころか、社会の誰にも相手にされず親切にもされません。衰退したゴッサムシティで街とと共に、彼も死んだような暮らしを強いられます。

特にそれが現れているのが、市の福祉サービスで受けられる診療です。精神科の先生は、形式的に毎回同じことをアーサーに質問します。アーサーは本当にあんたは僕のことを思っているのかと憤慨します。

そのうち、行政サービスは打ち切られ、アーサーは形式的に診てくれる場所さえ失います。アーサーは社会に見捨てられた、言わば「透明人間」と化してしまいます。

 

しかし、その透明な人間が実際に居なくなるかというと、そうではないです。物体は実際に存在しますし、透明な人間は、時にリアルな形を持った悪意を噴出させます。それはアーサー一人では無く、ゴッサムシティに住む人間全体に及んでいきます。透明な人間たちの実在する悪意は、人から人へ波及し、いつの間にか手の付けられない状態になっていると、本作では上手く表現されている、という事です。

アーサーは、ある出来事がきっかけで、その火付け役になります。しかし、アーサーが本当にその切っ掛けなのか、というと、本当はアーサーを透明にした社会にあるのでは、という見方も出来るのですよ。実在する人間を透明にした社会は、やはりそれなりのツケを払うのです。ラストに進むにつれて、どんどん社会はアーサー(ジョーカー)の方に傾いていきます。

 

ラストシーンはまさに圧巻。透明にされた人間たちの悪意が充満し、それが爆発します。行き場のない悪意は、爆発するしかないのです。社会を見る立場によって、その見え方が変わります。それまで最下層だったアーサーなどの透明な人間たちが、ついに透明ではなく、意思を持った本当にリアルな人間になるのです。

ここまで大袈裟な演出やアクションシーンを控えて来た物語が、壮大なラストを迎えます。アーサー(ジョーカー)は一気に”スター”になります。社会の形によって、支持される人間の定義は変わります。彼を推す人間が多数派ということは、つまり彼は主役なのです。それが、ラストシーンの意味でしょう。コレの為に最後まで取っておいた、とでも言うのでしょうか。社会が、彼をそのようにさせたのです。

 

アイコンとしてジョーカーを使用し、中身はしっかりリアルで、そこに鑑賞してみると意外性を感じます。見る人によってはエンタメとしての物足りなさを感じるでしょう。

実感は無いけど確実に忍び寄る社会の分断を、バッドマンの世界観とジョーカーというアイコンを用いることで、確実に僕には凄い物として伝わってきました。分かる人には分かると言うと、自分のことを賢いと言っているみたいでアレですが、本作にエンタメを期待しすぎると、どうしても物足りなさだけで終わってしまうのでしょうね...。

 

ジョーカー(字幕版)

ジョーカー(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: Prime Video
 

 

naocchi3.hatenablog.com

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