『永い言い訳』感想 浮気したって破天荒だって冷淡だって良いじゃないか。だって、人間だもん。
人間って色々な人がいますよね。愛妻家や親思い、子供好きから大の人間嫌い等々、、、。ちなみに私は大の人間嫌いです。だからと言って人を殺したりはしません。
人は一言では言い表せない生き物。言ってみれば、「矛盾だらけ」。しかし、何故か血液型や手相などで簡単に人間を表現しようとします。いや、そんなの絶対無駄です。辞めましょう。それを信じて接していても、「ええ、コイツこんな奴だったの?」と、失望してしまうからです。
妻が死んで泣けなくても、子供の世話が上手かったり、妻を愛していたけど、その妻の死を通じて知り合った人間と楽しく騒いだり、、、。ホント、人って分からないな~。
『永い言い訳』
監督:西川美和
キャスト:本木雅弘、竹原ピストル、深津絵里、池松壮亮、黒木華、藤田健心、白鳥玉季、他
<ストーリー>
人気作家の衣笠幸夫。妻が不慮のバス事故で、親友と共に死んでしまう。
しかし、幸夫は何故か泣けなかったのだ。それどころか、事故当時、彼は違う女を抱いていたのだ。
共になくなった妻の親友の夫・大宮陽一と出会う。
彼らは妻を亡くした者同士、徐々に親しい仲になっていく。幸夫は、陽一の子供たちの面倒を見ることになる。
幸夫は陽一の子供と接しているうちに、失ったものへの愛着が芽生えるのであったが、、、。
<幸夫の人間性に感動>
幸夫が見せる様々な側面に、「人間には色んな姿があるんだな」と気付かせてくれる映画。
主人公で有名作家の衣笠幸夫は、妻を失っても全く泣けなかった冷淡な人物。その上、事故があった時に違う女と寝ていたのだ。
旦那として最悪な幸夫。その後も担当編集者に理不尽に当たり散らしたり、、。この男、最悪でしょ?
そんな彼でも、同じく事故で母を失った子供の面倒を上手く見たりして、優しい面を見せるんだ。
同じく妻を失った大宮陽一は、凄く妻を愛してたし子供も好きなんだけど、妻が死んでからは全く子供の面倒を見れず。
事故を起こした会社が行った説明会で知り合った幸夫と陽一。
妻を失っても泣けなかった幸夫が、陽一の子供たちの面倒を見て心を通わせていく姿が、凄く不思議で感動してしまうんだよね。
予告を見る限りでは、本木演じる幸夫は根っからの最低男なのかと思ってたよ。
しかし、全くそのようなことは無く、むしろ最後にいくと妻を懐かしんで泣いたり。
女好きで破天荒で思いやるのある幸夫。そんな彼の色んな姿に感動。93点。
<編集者にキレる幸夫>
妻に髪を切ってもらうシーンからスタート。自分の出演している番組を観ながら妻とつまらなそうに会話する幸夫。この場面から、この夫婦は冷めていると分かるんだよね。
髪を切ってもらい、妻は友人と旅行へ。
幸夫は、妻が家を後にした直後、別の女と抱き合う。
その頃、妻は事故に遭って死亡。
あ、最悪だな。この男(世間の一般的な視点から言うと)。
妻を失ってからの幸夫。
葬儀でも全く泣く感じは無く、妻の友人たちに責められる始末。
泣けない幸夫も酷いけど、この友人たちもウザいね。死んでくれ。
その後の幸夫。
出版社の社員たちとお花見に行った彼は、「人の不幸に付け込んででも、お前らは俺の原稿が欲しいんだろ」と編集者を怒鳴りつけ食い物を投げつける始末。
するとその編集者も、「最近の原稿面白くないんですよ」と言い返し、喧嘩状態に。
いやいや、小説家でインテリな印象の強い幸夫。
妻が死んでも泣かない、つまり幸夫は感情の変化が無い男なのかな?と思っていたら、ちゃんと人間味のある男だったんだね。編集者に物をぶつける、破天荒な彼にクスッと来るね。
<陽一の子の面倒を見る幸夫>
自己の説明会で大宮陽一という男と出会った幸夫。
「俺の妻を返してくれよ~」ど怒鳴り込んできた、トラックの運転手・陽一。
一方の小説家でインテリの幸夫。二人の妻は友達同士で、交わるはずもない二人がこうして出会い、幸夫は執筆をしばらくお休みして、陽一の子供たちの面倒を見ることになる。
この幸夫に、また心を動かされるんだよ。
妻への愛を忘れ、違う女と情事に燃え、編集者に理不尽にキレる幸夫。全くの屑男かと思いきや、そうでも無いんだよね。
トラックの運転手で一切子供の事を知らない陽一と違って、子供と心を通わせていく幸夫。妹のわがままにも文句を言わず付き合い、長男の勉強の世話をしたり。
そして、長男は父にも話さない事を、幸夫に打ち明けるんだ。
幸夫、いい奴やんけ!
編集者に怒鳴り散らしたり浮気したりしてる姿と、こんな彼と比較すると、「人間って一言では語れないなぁ。ホント、いろんな面があっての人間なんだな」と感慨深くなってしまうのだよ。変な幸夫さん、でも優しい幸夫さん。
みんなも、どう?自分って一言じゃ表せないでしょ?人間って色々だな。
<妻との日々を思い出す幸夫>
幸夫は、陽一と彼の子供で海に出かける。
すると、陽一の目の前には死んだはずの妻の姿が、、、。
砂浜に映る、幸夫に微笑む綺麗な妻。
妻が死んだとき浮気してて、「これっぽっち」も泣けなかった男・幸夫。
ここで、遂に亡くなった妻の愛おしさに気づくのだよ。
失ってから気づくものってあるよね。僕にもあるよ。喧嘩して二度と口を利かなくなった友人や、仲良かったけど何故か距離が出来た人等々。たまに、懐かしくなるよね。
やっと思い出したか。
でも、失ってからやっと大事さに気づくんだよ。失ってからじゃないと、実感が沸かないんだよ。ほとんどの人って、そうなんじゃないかな?
この深津絵里さん、可愛いねぇ。この姿を、幸夫はじっと見つめるんだ。
海で幸夫が、いないはずの妻をじっと見つめる姿が何とも印象深い。
「俺にも、妻がいたんだなぁ」というような表情。幸夫も、普通の人間だったんだよ。ただ、その時泣けなかっただけ。
<補足:陽一さんについて>
幸夫と共にこの映画の主要人物の陽一。
幸夫と共に妻を失い、「俺の妻を返せ」と泣き叫ぶ彼なのですが、、、。
言葉のわりに、何か愛情が伝わってこないんだよね。子供の事も、あんまり分かってないし。
幸夫と食事をするシーンでも、高そうなワインを一気に飲んだり、子供のアレルギーを把握してなかったり。
陽一さん、あんたダメだね。。
そんな不完全な父兼人間・陽一。でも、自分が、仮に父親になった時のことを考えてみたんだ。
子供の事なんて知るわけないだろ。ましてや、一緒に居れる時間もほとんどない。それでも子供を愛せる陽一は凄い。僕なら絶対に愛する事すら出来ないでしょう。自分で精一杯だよ。
不完全で感情的な陽一。彼も一人の人間なんだよ。「ようそこのわけーの、彼の話を聞いてくれ」と聞こえてきそう。
<去年の邦画ナンバーワン>
『君の名は。』、『シン・ゴジラ』など、去年は邦画が豊作な年でした。
まぁ、どっちも面白かったよ。
でもね、観た後に劇場からしばらく出たくないと思ったのはこれだね。
Blu-ray欲しいな。
またな。
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