読書感想:「世界一豊かな国スイスとそっくりな国ニッポン」 実は凄い国スイスを通じて日本を考えよう。
またまた面白い本を読んだので紹介します。
「世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン」という本です、
川口マーン恵美さんという人が書いています。
スイスという国をザックリ知るに凄く良い本だと思いました。
のどかで穏やかそうなスイスですが、実は産業が発達している経済国でもあります。
事実、一人当たりのGDPも非常に高いです。
そして、国防に関してはこれ以上なく高い意識を持って取り組んでいます。
永世中立国ですが、それは高い防衛能力の上に成り立っているのです。
知ってそうで意外と知らない不思議な国スイスを、ぜひ本書で知りましょう。
5,000字くらいで、軽く読書感想を残します。
世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン (講談社+α新書)
- 作者: 川口マーン惠美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/11/18
- メディア: 新書
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目次
スイスの経済が良い理由は宗教に由来している。
スイスは産業も発達していて、経済状況も良い国です。
それには、昔の宗教が関係していると筆者は言っています。
やはり、長年培ってきた国民性や習慣というのは現在にも現れるという事でしょうか。
逆にいえば、それは簡単には変えにくという所ですかねぇ....。
のちのカルヴァン主義の指導者ジャン・カルヴァンは、プロテスタントが迫害されていたフランスからスイスに亡命してきた。彼はその後ジュネーブで、宗教改革の指導者となり、その宗派がカルヴァン派と呼ばれるようになる。十六世紀、まだスイスが貧しかったころの話だ。
宗教改革の先駆者であるドイツ人、マルティン・ルターは、救いは信仰によってのみ得られると説いた。一方、カトリックでは、善行をすれば天国に行けるとした(善行の一つが免罪符を買うこと)。
ところが、カルヴァンの教えは、そのどちらとも違った。彼によれば、全てが神によって定められている(予定説)。救われる人間は、もともと罪を犯さないのである。
ちなみに、カトリック教会では蓄財は悪とみなされる。貯まったお金すべて協会に寄進するのが善行で、それによって、人々は天国に行けるのである。
ところが、カルヴァンの「予定説」によれば、富が増えるのも、貧困に喘ぐのも、すべては神が決めたことだった。善いキリスト教徒が目標にすべきは、勤勉と禁欲によって、与えられた職業に励み、神の名声を高めることだった。
つまり、規律は厳しければ厳しいほどよく、教養は高ければ高いほどよく、職業は成功すればするほどよかった。その結果、お金が貯まったとしても、それがまさか罪ではありえなかった!
こうして、蓄財解禁の大砲が放たれた。金儲けに付きまとっていたやましい気持ちは取り除かれ、蓄財はよいこととなった。
貧乏人は貧乏であるように神が作った人間だ。一方、裕福な人間もまた、神が裕福であるように作った人間に過ぎなかった。しかも彼らは、勤勉に働くというキリスト教徒としての義務を果たしているうちに、裕福なったのである。
ここは非常に興味深いですねぇ.....。
カルヴァンという人物が、「予定説」説いて、その結果スイスの人達は豊かになっていったという事です。
ただ問題は、彼らには、せっかく貯まったお金の使い道がなかったことだ。勤労と蓄財は善でも、贅沢は悪だ。そこで、お金は大々的に新たな商売に注ぎ込まれた。越して富が富を生み、カルヴァン派のなかに、着実に資本が形成された。
後年、ドイツの有名な経済学者マックス・ウェーバー(一八六四~一九二〇年)は、プロテスタントがカトリックよりも教養があるばかりか、格段に裕福であることに気づいた。カトリック教徒に零細な手工業者が多かったのに比べ、大きな工場主や銀行家は、軒並みプロテスタント教徒が占めていた。
ヨーロッパで財政が破綻してしまっている南欧の国々は、ギリシャを除けば、イタリアもスペインもポルトガルも、みんなカトリック組だ(ギリシャはギリシャ正教)。それに比べて、オランダ、ドイツ、スウェーデンなど、プロテスタント色の強い国は財政規律がしっかりしている。宗教がすっかり薄れた現在のヨーロッパでも、ウェーバーの発見した法則は、まだその威力を保っているのである。
おお、ここは凄く面白い!
カルヴァンの教えによって、人は蓄財をして、それを元に商売をする事で、人は豊かになっていたそうです。富が富を生む資本主義が、ここで形成されたと後に述べています。
宗教と経済というのはあまり関係が無いと思われがちですが、そうでは無いんですねぇ.....。宗教と経済は、実はすごく関係していたんです。面白い。
このカルヴァンさんの教えが無ければ、資本主義も生まれていなかったかもしれない。そして、世界は共産主義が支配していたかもしれないですね。彼の功績は偉大ですねぇ。
彼の名前は、もっと広く知られるべき人物ですね。高校で世界史を取っていた人なら常識かもしれませんが。
しかし、宗教が自由になった今でも、その影響が色濃く残っているのが、またスゴイです。
カトリックが強かった国では、今でも経済的に苦しんでいますね。スペインもイタリアも財政破綻間近かと言われてますから.....。
一方、ドイツなどは経済基盤がしっかりしています。長年築いてきた習慣や国民性というのは、やはり今にも通じるものがあるんですねぇ。
しかし、イタリアやスペインの人達って、経済がボロボロでもお気楽で楽しそうですよね。それも、カトリックの影響なんでしょうか?それもまた良いなぁと思ってます。
逆に言うと、それらのものを短期間で簡単に変えるのは難しいのかもしれません。
日本人の大人しくてあまり強気に出られない国民性も、長年培ったモノですから、それは簡単には変えられないのかも、と思ってます。
そのような国民性や習慣を簡単に変えようとする、あるいは変えてしまうような政策は、よく考えてから実行すべきですね。
移民政策などにも大きなヒントを与えてくれます。ただ労働力足りないから外国人を雇えば良いという単純な考えでは、絶対に失敗に終わるでしょう。
いずれ、この経済と宗教の関係は、すごく面白いですね。
他の国でもカルヴァン派が浸透していれば、今もう少し経済はまともだったかも.....。可哀想と言えばそうですが、昔のことを言っても何にもなりませんからねぇ.....。
日本にカルヴァンが来ていれば、日本ももう少し違っていたかも。そう考えると、より面白いです。
自国の通貨が高すぎるがゆえに苦労するスイス経済。
スイスは経済状況が良すぎるが上に、ユーロとの間ですごく苦労しているようですね。
日本もそうですが、やはり過度な通貨高は憂慮すべき問題でしょう。
その辺が詳しく書いてあったので、引用します。
スイスの言い分は、おそらくこうだろう。
「この四年近く、どれほどユーロを買っても、スイスフラン高は収まらなかったばかりか、一番の懸案事項であった物価の下落さえ止めることができなかった。アメリカでも、大規模な量的緩和のあと、一時的に市場は活気付いたが、それがまた元の木阿弥になりかけている。日本も似たようなもので、刷ったお金の枚数ほどの効果が上がったようには見えない。これでは、信用失墜のデメリットの方が高く付くではないか」
ここは、スイスの通貨スイスフランがユーロに対して高くなっている事に不満を持つスイスの現状が述べられています。
EUの通貨ユーロは、ユーロに加盟している全ての国の経済状況の平均で決められます。
一方スイスはユーロを採用していません。産業が凄く発達していて、財政も安定しています。そのため、スイスフランはユーロに対して高くなってしまうのです。
コレによって、スイスの輸出はけっこう苦労しているようです。経済が安定して、自国の通貨が高く評価されるのは良いですが、輸出に強い国には致命傷です。
やはりユーロは経済的に弱い国とドイツのような強い国の平均を取るというのが、ムリがあるのでしょう。ドイツはそれで得をしているようですが。
ただ、そうはいっても、押さえていても高かったスイスフランは、重しが外れたおかげで、さらに高くなった。そうでなくても苦しかった輸出産業は、一気に競争力をなくした。観光客の足も止まった。
スイスの国立銀行はユーロを買ってスイスフランを売ることで、うまく自国の通貨が高くなるのをコントロールしていたようですが、いったんそれを止めた時に、スイスフラン高が止まらなくなったようですね。やはり過度な通貨高はやはり避けるべき事態ですねぇ。
日本も昔(5~6年前)はそうでしたが、輸出は不利になるし、結果株は安くなるし、就職率は下がるしで、苦しかったですからねぇ.......。
いま日本はデフレを避けるために様々な施策を行っています。
若干円は安くなりましたし、株価も高くなりましたし、良いんですが、逆に輸入したモノが高くなってしまったので、不満を抱く人も多いみたいです。その辺のバランスは難しいですねぇ.....。
日本も放っておくと、また円高で株安が進むでしょう。あまり通貨を刷り過ぎるのも考え物なので、その辺のバランスが難しいですねぇ。
このまま景気の落ち込みが続けば、中小企業から順にリストラが始まるのは目に見えている。当然、製品開発にもブレーキがかかる。工場やサービス業務の外国移転を、本気で考え始める企業も出るだろう。この国では生き残れないという懸念が、多くの経営者の頭のなかを駆け巡った。結局、スイスの中央銀行は、現在も、せっせとユーロ買いに継続している始末だ。
二〇一六年、しかし、それでもスイスの景気は次第に落ち込んでいた。とくに、スイスにとって重要な産業、工業機械と薬品の分野で輸出が鈍ったうえ、中国の汚職対策や成長の鈍化もあり、高級時計の売れ行きもパタリと止まったのだ。
フランスの多国籍重工グループであるアルストムは、アメリカのゼネラル・エレクトリックに買収されたのち、スイスでの雇用を一三〇〇人も削減した。また、ドイツのシーメンスもリストラを行い、スイスで活動を縮小している。そればかりか、スイスの半国営の電話事業者スイスコムも七〇〇人の雇用をカットした。
スイスの失業率は二〇一〇年、四・五%まで上昇していたが、翌二〇一一年に一ユーロ=一・二〇スイスフランが固定されたことで一時下がった。しかし、それがまた徐々に上がり始めており、(国際労働機関〔ILO〕調べ)厳重な注意が必要だ。
急激な通貨高は、国内の雇用にも悪影響を及ぼします。
かつて日本もそうでしたが、自民党が政権を取り戻す前は円高が進んで、求人倍率も1倍を下回っていましたから......。やはり、そのような事は避けるべきですね。
しかし、このスイスの例もけっこう悲惨ですね。やはり働く所が無いのは、国民の生活に直結しますから。
スイスの人口は800万人で、そこで1,300人や700人の雇用をカットされると影響はかなり大きいですよね。
日本は1憶2,000万人いるので実感が沸きにくいですが。それだけ、スイスの通貨高は致命的だったという事ですね。
ただ通貨を安くしすぎると輸入品が高くなってしまいます。その辺のバランスを考えて、通貨の価格を調整しなければいけませんね。
この本でも、スイスが食料品を輸入している事が書かれています。今後、スイスがどうバランスを取っていくのかが気になります。
スイス人からしてみれば、すべてはユーロのせいなのである!
確かにいま、ユーロがよいアイデアだったと思っている人は、もうEUのどこにもいないだろう。しかし、犯人を特定してみても、どうにもならない。
南欧の経済破綻国が立ち直らない限り、ユーロは不安定なままでスイスフランはそのとばっちりを受け続ける。スイスでは、いい加減に破綻国を助けるのをやめて、デフォルトさせるべきだという意見も多い。
もともとスイス人は、ドイツ人と同じく、借金に嫌悪感を持つ性格だ。そして、おそらく多くのドイツ人も、口には出さないまでも、実は心のなかで同じように思っている。
いずれにしても、自国の通貨が強すぎるのは考えものだ。これからもしばらくスイスでは、政府も国民も、高いスイスフランに悩まされ続けることになるだろう。
スペイン、ポルトガル、ギリシャ、イタリアなどの国が調子が悪いと、スイスは通貨高に苦しめられるでしょうねぇ.....。
ユーロというシステムも、今後見直されるべきなのかもしれないですねぇ。
移民政策は慎重に。
最後に、移民政策について面白い事が書かれていました。
日本も、これから移民を受け入れていく(既に受け入れている)と思います。
その時に、本書に書かれている事をぜひ考えて欲しいです。
いずれにしても、スイスの外国人政策は概ね、かなりリベラルだ。いや、正確に言えば、リベラルだったのである。
スイスは昔から、外国人の割合がけっこう高い国でした。
そして、政策的にもリベラルで、スイスで育った外国人なども、スイスで働けるような政策を敷いていたようです。
今では、在留許可をもつ外国人は24.3%もいるそうです。
ところが二〇一四年、突然、風向きが大きく変わった。右派の国民党が「大量移民反対」という国民イニシアティブを発議し、それが国民投票で可決されたのだ。あまりに多かった外国人への反動かもしれないが、要するに、外国人がこれ以上増えて欲しくないと思っている外国人が、投票者のうちの半数を超えたのである。
しかし、そんなリベラルな流れが突然変わったようです。
やはり、外国人が増えすぎると、それに反発する国民が多くなったようですね。
コレはどこの国でも同じでしょう。外国人の急激な受け入れは、自国民の反発を招くという事ですねぇ.....。
いずれにしても、「大量移民反対」のイニシアティブが可決されたということで、政府は国民の意思を盛り込んだ新法案を作らなければならなくなった。そして、最終的にそれを議会に承認されなければならない。要は、主催者である国民の意思を実行に移す。それがスイスのやり方なのである。
EU非加盟国のスイスは、前述のEUとの二者間協定、およびシュンゲン協定のおかげで、様々な恩恵を受けている。自由貿易のためには、おたがいに自由な人間の行き来を認めなければいけない。これが最低条件であり、またシュンゲン協定の肝でもある。
もともとEUとスイスのあいだでは、人の往来もモノの取引も濃密で、経済関係は常に密接、かつ良好であった。それがここ二〇年、これらの協定に支えられて、さらに拡大したのである。他人の自由な往来と、貿易の繁栄は、確かに正比例している。
しかも、経済的により多くの依存をしているのは、EUではなく、おそらくスイスのほうである。言い換えれば、スイス経済には、EUからの外国人労働力が大きく寄与している。なのに突然、スイス人は、その外国人の役割を無視したようなことを始めようとしているのだ。EUは当然のことながら、大きく反発している。
では、なぜスイスの企業が移民を雇ったかというと、メリットがあったからに決まっている。スイスはもともと恒久的に人手不足だし、もちろん最大のメリットは、移民はスイス人よりも安い賃金で働いてくれることだろう。(後略)
過度な外国人の受け入れに反対して国民が反対をしました。
しかし一方で、スイス経済は外交人労働者によって支えられていたという事実もあります。
後にも述べていますが、スイスは末端の労働者も医師のような高度な人材も、外国人を使って補充しています。
それは、スイス人だけで供給できていないという事なので、単純に移民が悪い訳ではありません。
ただ、国民感情として、外国人が増えすぎるのも好ましくない訳です。
この辺をどうバランスを取るかも、凄く難しい問題ですね。日本も移民を受け入れるらしいですが、どのような政策で運営していくのでしょうか?楽しみでもあり、不安でもあります。
ちなみに、僕は過度な移民には大反対です。文化も国民性もまったく違う人間を受け入れるのは、やはり大きな摩擦を生むでしょう。
この本の中でも述べられていますが、その辺をちゃんと考えて考えて、さらに考えないと、移民政策はトンデモなものになってしまうでしょう。別に差別したい訳ではないですが。
ただ、日本の場合は、隣の国との関係が微妙ですよね。
スイスを通じて、日本を考えよう。
これ以外にも、様々な面白い事が書いてあります。
スイスという国を考えることで、日本という国がどういう方向に行けば良いのか、かなりのヒントをくれると思います。
皆さんも、スイスという国を通じて、日本という国を考えてみましょう。この本は、面白いヒントをくれる良書です。
世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン (講談社+α新書)
- 作者: 川口マーン惠美
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