読書感想「使ってはいけない集団的自衛権」 経済の勉強になるが、政治に関してはツッコミどころもある本。
本屋で目に付いた、「使ってはいけない集団的自衛権」という本を読みました。
TSUTAYAの新刊コーナーに置いてありました。
菊池英博さんという経済学者が書いた本です。
けっこう色々考えさせられたので、軽く感想を残します。
目次
ザックリ感想
経済と政治について書かれた本でした。
特に経済について書かれている部分が面白かったです。
経済の部分はとても面白い
アメリカ、日本、中国の経済状況について、分かりやすく説明しています。
特に、「新自由主義」という経済思想の問題点について書かれている所が面白いです。
新自由主義によって、アメリカは財政赤字や貿易赤字を招き、現在のトランプが保護貿易で再びその「双子の赤字」を解消しようとしているという説明がされています。すごく説得力のある内容です。
日本もそのアメリカの政策を見習った結果、日本もデフレを招いてしまったという説明も面白かったです。
小泉元総理は世間では良い印象を持たれています。が、実際にはそんな事はなく、むしろ日本を弱くした総理なのではないか?と思わされました。
確かに国を小さくすれば、それだけ国は弱くなりますからね。ちょっと考えれば分かるんですがね....。自分は何も知らなかったなぁと知りました.....。
現在、日本では「アベノミクス」という経済政策を行っています。その成果もあって株価も上がったし求人倍率も改善しました。
その一方で円安と消費増税の影響で物価は上がっていて、国民の暮らしは悪くなっているという事実もあります。その辺も書いてあるので、「アベノミクスはホントに正しいのか?」という疑問ももたらしてくれます。
政治・安全保障については賛否両論の内容。
しかし、政治や安全保障について書かれた部分では「ん?」と思わされる所もありました。
この人の言っている事も分かるんですが、今の東アジア情勢を踏まえていない内容でしたね。
著者は、「韓国・中国・北朝鮮と和解すべきである」と主張しています。
しかし、日本は何回も和解しようと努力してきたはずです。
日本は謝罪と賠償をして、中国と韓国と平和条約を結んでいる訳ですから。既に和解はしているはずなのです。
そして最近では、領海に侵入してきたり過去の問題をいきなり蒸し返して来るなど、日本に敵対心を出してきました。
その辺をしっかり踏まえると、もう少し違う主張になると思うんです。
ですから、僕としては納得できません。その辺をもう少し現代に合わせた主張にしてくれたら、さらに良い本になっていたでしょう。
気になった部分を引用して紹介
本書の中で気になった部分を、少し紹介します。
新自由主義の失敗
米国で最初に新自由主義を取り入れたのは1981年に就任したレーガン大統領です。注目すべきは、その後30年経過した現在でみると、米国は財政赤字と貿易赤字が拡大して債務国に転落し、富裕層への減税で国民の所得格差が著しく広がり、社会的な混乱を招いていることです。新自由主義政策の根幹をなす「トリクル・ダウン」という理論は、「実証性に乏しい政治t系スローガンに過ぎない」(ジョセフ・スティグリッツ、コロンビア大学教授、ノーベル経済学賞受賞)ことが確認されており、新自由主義政策は「99%の国民の富を1%の富裕層に集中する」政策だったのです。(図表3-1「新自由主義で所得格差が拡大」)
過去30年間で、所得の増加率が消費者物価の上昇率上回ったのは、なんと「国民の1%」だけだったのです。企業法人についても同様な傾向が見られました。こうして米国では、あらゆる面での格差が拡大し、社会不安が広まりました。これこそ、新自由主義の結末です(拙著『新自由主義の自滅』文春新書、2015年)。
第三章の「新自由主義で封じ込められた日本経済」という所からです。
いやいや、非常に面白かったですねぇ.....。
よく米国では、格差が激しいと言われますが、ここでそれを説明しています。
何となく「アメリカは格差社会で、貧乏人には辛い」と言われますが、ここでそれがより明確に理解できます。
ここで書かれているのは、「レーガノミクス」という、新自由主義に分類される経済政策です。
新自由主義というのは本書にも書かれていますが、「小さな政府」と「市場原理主義」を特徴とする経済思想です。
小さな政府なので、緊縮財政が敷かれ、社会保障政策などが縮小されます。その結果、再分配や医療費、インフラ投資が小さくなり、中低層はやや経済的に圧迫されます。
また、市場原理主義を重視するので、ここからも「政府による再分配」が否定されます。
んで、レーガン大統領がその政策を実施した結果、所得の上昇率が物価上昇率を上回ったのは国民の1%だけで、その1%の富裕層に富が集中してしまったそうです。ここにはビックリですねぇ....。まさに政治の失敗というべきでしょう。
確かに、富裕層や大企業を優遇し、利益を出して貰って、経済を引っ張ってもらうのも大事です。が、その結果、アメリカでは双子の赤字が進行してしまいました。
この辺からも、経済というのは難しいですね。どのような政策を取ったら、経済は上手く回るのでしょうか?
が、それが分かったら苦労しませんよね。それを研究しているのが大学の教授な訳ですから。
このレーガン大統領の政策の失敗には、中国などの新興国に生産拠点が移ってしまった事も関係しているのでしょう。政策だけのせいではないはずです。
しかし、やはり経済政策は、中間層を重視しないと成功しないという結論が出せるのでしょうか?その辺をじっくり考えさせられる部分でした。
中国・韓国・北朝鮮と和解?
ましてや、宣戦布告もなくコクドを蹂躙された中国国民と植民地支配を受けて苦境を味わった韓国・北朝鮮の国民にとっては、日本との「和解」からほど遠いのが現状であり、とくに過去数年の日本外交のもとでは、和解よりも対立関係が強まっており、危機的な状態です。どうすれば「和解」の道が開けるのでしょうか?
第九章の「日中・日韓の和解を妨げているものはなにか、どうすれば和解できるか」という章から引っ張りました。
章のタイトルからも、すご~く違和感を覚えるのですが.....。
ここを読むと、悪いのは全て日本で、和解できないのも日本の政治に原因があるというふうに読み取れるのです。
しかし、中国とも韓国とも、条約は結んでいますし、謝罪と賠償は住んでいる事になっています。和解はしているはずなのです。
最近の情勢を見ると、中国は一方的に領海に侵入しています。韓国は戦後何十年か経ってから、慰安婦という謎の問題を持ち出して、日本からお金を取ろとしています。
こういう事を考えると、和解できないないのは無効に原因があると考えるのが普通でしょう。
周辺諸国と仲良くしたいのは当然です。特に中国は最大の貿易相手ですから。
しかし、だからと言って日本がムダに謝罪してはいけません。仲良くするのと、それは別問題です。
その辺の直近の情勢を踏まえていたら、もう少し良い本になっていたでしょう。
この他にも、政治や安全保障については疑問を持たざるを得ない内容でした。
古い歴史観という印象を感じざるを得ません。非常に触れにくい問題ですが、それ故に慎重に書いて欲しかったですねぇ.....。
まとめ:最近の経済問題に関心があるなら読んでみよう。
経済問題について興味があるなら、本書は凄く読む価値がある良書です。
特に、「新自由主義」については詳しく書かれているので、すごく良いです。
日本の経済についても、より詳しい視点が得られるでしょう。
安全保障については、中立な視点が欠けているので、読まなくて良いですwww。
「使ってはいけない集団的自衛権」というタイトルですが、経済本として非常に優秀な本でした。
ではでは。