「村上春樹の100曲」感想 音楽は物語の「メタファー」だよ。
こんちわ、なおっちです。
東北の片隅で無職ロックンロールを叫び続ける26歳です。
村上春樹が好きなんですが、著作はほとんど読んでいます。ハマったのは、初期の三部作、ノルウェイの森、海辺のカフカ、1Q84といったところでしょうかね.....。長編で読んでいないのは、「国境の南、太陽の西」くらいかな......。
「騎士団長殺し」はクソだったんで売りましたファック。
村上春樹の著作には、よく音楽が出てきて、物語の中で重要な役割を果たしています。「ノルウェイの森」なんて、ビートルズの曲がそのままタイトルになっているくらいなのですから、村上春樹は凄く音楽が好きなんですね。ムラカミRADIO、なんてのも放送しているくらいですから。
そんで、最近、こんな本を読みました......。
という事で、この本では、村上春樹の小説で登場する音楽を紹介しています。本を読んでいて、「あれ、この曲って何だろうな」とか、「このアーチスツは名前だけは聴いたことはあるけど、曲までは知らないなぁ....」という事もあります。
この本では、そんなハルキ・ムラカミ氏が作品に出している曲たちについて、「どの作品の、どの辺で登場しているのか」とか、「その曲が小説の中で、どのような役割を担っているのか」とか、そんなことが書いてあるんです。
もしかして、まだ知らない素晴らしい音楽に出会えるかも.....。という事で、軽く感想を残します。
本書は、村上春樹の小説に出て来る音楽を、ジャンル別(80年代以降、ロック、ポップス、クラシック、ジャズ)に分けて紹介しています。
まず、最初に「80年代以降の楽曲」が紹介されていますが、どうやら、ハルキさんは最近の音楽はそんなに好きではないようでして....。紹介のされ方も、ややあっさりです。
日本アーティストだと、どうやら「サザンオールスターズ」や「B'z」とかも、作品の中で詳しく触れられることはなかったようですね。ハルキさん本人も、最近の曲には、あまり興味が無いのでは?と、本書で解説されています。
どうやら、ハルキはかなり昔の音楽が好きなようで(ハルキ自身が青春を送ったのが60年代~70年代)、その影響もあって伝統的な音楽が好きなようですね。本書も、80年代以前の音楽を中心に紹介されています。
次に「ロック」。
ハルキさんってロック聴くんだな、と思いますが、意外ですよね。でも、思えば色んな作品にロックミュージックが出て来るなぁ、と思いました。
ロックの中でも、やはり「ノルウェーの森」は代表的です。小説では、まず冒頭、主人公のワタナベが37歳になり、飛行機でドイツに向かっている時に、それは流れます。そこでワタナベくんは激しく動揺します。そこで、大学生の時に恋をした「直子」を思い出します。
本書を読んでいて、新たな発見がありました。まず、「ノルウェーの森」は、ジョン・レノンが愛人との恋の様子を遠回しに記した曲だそうです(読むまで知らなかったwww)。
物語の中で、大学生のワタナベ君が、直子と関係を持ちますが、もう一方で、大学の同級生の緑と交流を深めていきます。さらに、直子の病院のルームメイトのレイコとも関係を持ってしまいます....。
僕は、「ノルウェイの森」の中で、ワタナベ君が冒頭で混乱するのは、ただ直子を思い出しているから、だと思っていました。しかし、ビートルズの「ノルウェーの森」の意味を知ると、おそらくそうでは無いのかも.....というのが、この本に書いています。新たな発見でしたねぇ....。
それで、小説「ノルウェイの森」では、ビートルズの「ノルウェーの森」が、物語の内容を暗示(メタファー)する存在として、用いられているんです、よ。
ただ、ファッションとして用いられているのではないのです。ほら、ハルキさんがよく、「世界はメタファーだよ」と言っているでしょ?音楽は、ストーリーのメタファーなんです。
他にも、ロックには、「ビーチ・ボーイズ」とかがあります(ポップスに分類されている曲もありますが....)。「サーフィンUSA」とか、どこかで一回は聴いたことがあるでしょう。これも凄く良いです。特に初期のハルキさんの作品だと、こういう曲を聴くと、何となく小説の世界を想いうかべることができます
しかし、この本を読むと、ハルキさんの作品でビーチ・ボーイズが流れるのは、砂浜で明るい太陽の下で人々がはしゃぐような意味合いではなく、むしろ死を暗示するため、だそうな....。
いわく、それはビーチ・ボーイズというグループのストーリーとリンクしている、と。この辺も読むと面白い。でも、初期のドライで軽快なタッチの文体からすると、やはりビーチ・ボーイズは、「明るく楽しい感じ」を暗示するものとしても受け入れられるなぁ、と個人的に。
次に、「ポップス」。
まず、1Q84に出て来た、ナット・キング・コールの「ペーパームーン」。これは聴いてみたんですが、凄く良い曲ですね。リズミカルで....。解説を読むと、タダのファッションではなく、確かに小説の内容を暗示するような役割を果てしているんですね。曲には、1Q84の意味合いが込められています。
もう一曲、ナット・キング・コールの「国境の南」という曲。僕、何度もググったりアマゾンで検索して探しましたよ...。でも、出てこない......。そんで、この曲は何と、「存在しない」www。ハルキさんは、ナット・キング・コールの「国境の南」という曲を、小説の世界(ダンス・ダンス・ダンス)に合わせるために、でっち上げたそうです....。やれやれ....。でも、それだけ、音楽というのは、物語の中で重要な意味を成すのですね。
後には、「クラシック」、と「ジャズ」が登場します。この辺はハルキさんはお得意ですね。クラシックは僕はあまり聞きませんが、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」(1Q84に登場)は、気になったので聴いてみました。
それまで、「1Q84」は、ポップでファンタスティックな物語だと思っていましたが、「シンフォニエッタ」を聴くと、そうでも無いのかな...と思ったり。音楽の意味を知ると、ストーリーの見え方も変わってきますな、と。
ジャズだとモンクとか、その辺は凄く良い曲ですよ、ハルキさんを読んだことがない人も聴くと良いでしょう。
春樹さんの小説には色んな音楽が出てきます。作品の中で登場した楽曲を聴いていると、その世界に入り込んでいる気になれるかも....。実際、「ノルウェイの森」とか、本当にそれっぽいですよ。
ワタナベ君も、直子も、またはレイコさんとかも、「ノルウェーの森」的な、モヤっとした深い森に迷い込んだのかな....って想像すると、何だか楽しくなりません?小説自体は決して楽しいテイストではありませんが....。
あと、ビーチ・ボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」とか、「サーフィンUSA」とか、初期の「風の歌を聴け」のドライで軽快な感じとピッタリだなぁ....と。コレを聴いて海辺なんて歩いたら、完全に「僕」(初期の主人公)じゃん、と思うのは、僕だけだろうか(サーフィンUSAは「ダンス・ダンス・ダンス」に登場)。
という事で、皆さんもハルキさんの世界にハマって見て下さい。そのためのガイド的なのが、本書に書いてあります。