ニートの平日

地方国立大卒ニートの生活記録。「え、ニートに平日も休日もないだろ....」という下らない日記です。

映画『ミナリ』 そういうものに私はなりたい。

こんにちわ、なおっちです。

無職ロックンロール~社畜ロックンロール。現在はスーパーで肉を切ってます。まさに社畜ですね。

 

という訳で『ミナリ』を見てきました。『ノマドランド』に続いてアカデミー賞候補作の鑑賞です。

映画『ミナリ』公式サイト

映画『ミナリ』公式サイト

 

アメリカのアーカンソー州にやってきた韓国系の移民ファミリーが、農業で一発あてようと奮闘する物語です。

 

今年のアカデミー賞では、『ノマドランド』が作品賞をとりました。『ノマドランド』は職を失った女がキャンピングカーで移動しながら、その日暮らしをする話です。人間とは何か?的なテーマを含んだ作品でありました。人が生きる上で大切なことは?と思い立ったら、観てみましょう。

 

naocchi3.hatenablog.com

ノマド 漂流する高齢労働者たち
 

 

そんで、本作『ミナリ』は、アメリカのカントリーサイドに移住してきたアジア系家族のストーリーです。

 

『ミナリ』とは芹(セリ)の意味で、セリは何処にでも生えているらしいです。冒頭でファミリーの婆さんが、芹の優秀さを孫のデビッドに説明します。

確かに農作物として良いものは他にもあります。トマト、ニンジン、レタス、キャベツ、などなど、日常的に消費されているものは、このような物です。あくまでセリはマイナーな存在です。

しかし、それらは育てるために適切な環境があります。何処でも育つ訳ではないです。時にビニールハウスなど、特殊な養育環境を必要とします。つまり、それは弱いのです。ミナリ(セリ)は、その反対の強さの例え(メタファ)として用いられています。

 

移民ファミリーに強烈な試練や悲劇が待っていた....ていう訳でもなく。移民だからといって差別に遭うわけでもなければ、凄惨な事件に巻き込まれるでもないです。むしろ回りの人間たちは移民ファミリーに親切に接します。物語はわりと淡々と進みます。これは本当にありそうな、リアルな日常の表現に徹していますね。こういうテイストの映画では、誇張しすぎるのは良くないということを踏まえています。

 

しかし、ファミリーが経営していた農業は行き詰まります。水が出ない、取引先が見当たらないなどの困難に直面し、それもあってか父親と母親の喧嘩が絶えません。だから、夫婦ともに養鶏場で細々と働くのですが、父は成功してBIGになることを夢見て渡米してきたわけです。それに納得いくわけがなく、徐々に夫婦に亀裂が生じます。

 

これをどのように乗り越えるのか、または耐えるのかは観てのお楽しみだとして、やはり本作は『ノマドランド』と似ています。『ミナリ』は、アメリカに移住して一から農業を始める家族の話です。『ノマドランド』も、失業した人間が旅に出て人生をやり直す話です。前者は定住生活者で、後者は遊牧民つまり移住生活者で、そこに違いはあれど、本質的な「全てを捨ててきた状態」あるいは「全てを失った状態」つまり「何もない状態」から人生を始める、という所は共通しています。何も無い状態で、人間がどうにかして生きていく様を表現している、という訳です。

 

都市部あるいは郊外での生活に慣れている人々には、そもそもこういう生活は奇異なものに見えるかもしれないですね。しかし、そもそも人間とはこういうものだったのですよ。人類の、移住しながら生活して、定住を覚え....という過程では、おそらくこんな感じだったんじゃないかな....と個人的には思っています。つまり人間の本当の姿は、『ミナリ』や『ノマドランド』みたいな状態なんじゃないか、と。ゆえに、人間がどう生きれば良いのか、という問いに、この二作は非常に良いヒントをくれるでしょうね。

技術を発達させた人類が、今度は自分たちより遥かに賢い人間やマシンを開発し、実際に運用しようとしています。そこで、いったん基本に戻り、「我々はどこから来て、何者で、何処へいくのか?」という人類の一番の謎に、そろそろ取り組む時が来ているのかもしれないですね..。この2作の流行は、それを反映しています。

 

最後に『ミナリ』は、おそらく賢治の「雨にも負けず」という事だと思います。この詩を引用しておきましょう。ちなみに僕は賢治が好きでもないし、興味もないです。

 

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ※(「「蔭」の「陰のつくり」に代えて「人がしら/髟のへん」、第4水準2-86-78)
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ[#「朿ヲ」はママ]負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

参照:宮澤賢治 〔雨ニモマケズ〕

 

つまり、どこに行っても逞しく生えるミナリ(セリ)の様子が、賢治の詩と重なる訳です。ラストのシーンで少し残念なことが起こりますが、ファミリーのミナリのような姿が見えるでしょう。

 

本作、主人公はどうやら婆さんらしいですね。エンドロールでも「全ての婆さんに」とあります。

 

naocchi3.hatenablog.com

 

naocchi3.hatenablog.com

[ぼっちですが何か?]は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。